2011/01/17















 #15 Full Gold Crown     Type Ⅲ Gold

歯科技工士としても経営者としても、分からないことはいまだ多い。
ただ、分かってきたこともある。一つは私の中で確信に近い。

それは金の事。

ゴールドではなく、技工料金やサービスに対して発生する料金等について。
プライスリストを見てあーだこーだ言うドクターもいれば、
見る前からいくらにできるかと聞いてくるドクターもいる。
支払うべき金額を断りもなく変えてしまうドクターや、支払いの極端に悪いドクター。
そういったことを含めて、金銭的に揉めたりしたドクターとは、

遅かれ早かれその関係は終わる。こちらが歩み寄る寄らないにかかわらず。

もちろん、うちが提供するものからその価値を見いだすことが出来ないとなれば、
私達のサービスあるいは技術的な問題もある。提供した歯科技工物に対して、
文句を言われるのなら真摯に受け止め、改善していかなくてはならない。
審美的なものは患者やドクターの好みあるだろうし、技術的な部分に関しては、
ドクターの期待に答えられるように歯科技工士は日々精進するしかない。


しかし、ビジネスのあり方や請求、料金体系について口出しされるのはどうかと。
他所のラボがどうとか、そんなの聞いた事がないとか、他所はもっと安いとか。

それが、うちのラボにどう関係があるのだろうか?

『何でそんな料金体系なの?』
『他所の歯医者はこうしてくれた。』
『他所はこの値段だったけど、安くできる?』

と患者が歯科医師に対して言おうものなら、どう思うのだろうか?
眉一つ動かさず平静でいられるものだろうか?

私自信が人としてまだまだ未熟だと言えばそうなのだが、

ビジネスである以前に人と人との関わりでもある。相手は自動販売機などでもない。
相手に対しての最低限の敬意、信頼関係が大事なのは恐らく多くの人が認識している。

例えば牛丼屋であっても、『牛丼並み』と言い放つ客と、
『牛丼並でお願い』と言われるのではその受け取られ方は違う。
当然、最低限衛生管理の行き届いた厨房で調理されているだろうと疑いもしないし、
器具は消毒したか、手は洗ったか、仕入れは . . . 、などとわざわざ聞きはしない。
心配なら利用しなければいいだけで、選択肢があるのなら他所へ行けばいい。
そして、無言で出される牛丼と、『どうぞ』と一言あるのでは明らかに違うのだ。

同じ目的でも、そこには相手に対して最低限の敬意や信頼があってしかるべきだろう。

お客様は神様だという。 神から金を取るなど罰当たりで恐れ多い。
そもそも提供する者がいるから、その恩恵を受けたい者がいて、金も意味を持つ。
誰もいない地球上でたった一人、金など意味がない。牛丼を売っても意味がないのだ。

与える側と受ける側、双方に互いを思いやる気持ちが少しでもあれば、

どちらが上でも、下でもないはずだ。

美味しい牛丼を提供してくれて、ありがとう。
新鮮な魚を提供してくれて、ありがとう。
毎日新聞を配達してくれて、ありがとう。
定時にバスを走らせてくれて、ありがとう。
治療してくれて、ありがとう。




日々の当たり前は、金を払っているから当たり前なのではなくて、
提供する側が欲している人を思いやり改善するから、その恩恵を受けられる。
もともと無いものに、その恩恵を求めることはできないはずだ。違うだろうか?

『歯を作ってくれて、ありがとう。』『いえいえ、仕事をくださって、ありがとう。』

それは、とてもシンプルなことで、小学生でも習いそうなこと。
タダなら感謝。金払うなら当たり前。人間は昔からそんな生き物だったのだろうか。

『そんなやり方で続けられるもんなら、やってみろ!』

開業当初に吐き捨てられた言葉が、今でも頭をよぎる。

『上等だよ!』