#7,8,9,10 Diagnostic Wax Up for Laminate Veneer
あるドクターは診断用のワックスアップから、私に手掛けさせてくれます。
そのワックスアップをもとに支台歯形成を行い、
プロビジョナルレストレーションをドクター自ら製作します。
患者の口の中で一定期間使用されるプロビジョナルレストレーションは、
ある程度の強度と審美性、また生体に調和したもので無ければなりません。
彼らは見事にそれらを再現し、参考用模型を作り、私に提供してくれます。
おそらく、チェアサイドで手間暇かけたであろうそのプロビジョナルは、
歯科技工士にとって重要なインフォメーションを与えてくれる。
また患者にとっても、理想的な形態を実際に口の中で再現しているため、
最終的な外形をイメージしやすく、結果的に患者からの満足も得られやすい。
うちではワックスアップ1歯あたり$35請求させていただいている。
単純に時間だけではなく、その作業の重要性または技術料を考慮し理解を頂いている。
患者にも歯科医師にも、そして、私たち歯科技工士にも最終的なゴールを定める事は、
審美歯科治療を成功させる上でとても重要な事だ。
図面や打ち合わせ無しで建てられた家が、
その家主の満足を満たすものであるはずが無い。
また長い間、安心して住み続けることのできる家であるはずも無い。
いきなり柱を打ち込む大工に、大切な家を任せる家主はいないだろう。
いきなり歯を削る歯科医師に、大切な歯を任せる患者は...
ワックスは YETI THOWAX を長く愛用している。色は、ベージュ。
表面性状が見えやすいことからグレーを使用していたこともある。
しかし、グレーあるいは濃色は「患者への印象が悪い」と嫌がるドクターも多い。
診断用ワックスアップは当然患者にも見せることになる。
歯列模型を見慣れた歯科医療従事者ならともかく、
自分の歯の模型ですら、ギョッとする患者も少なくはない。
模型上で見る、これから治療するであろう箇所がお歯黒では...。
患者にとって歯は白いイメージなのだろう。
逆に白いワックスを使って欲しいと言うドクターもいる。
しかし白は光の反射が強く表面性状や輪郭が見え難かったり、
また膨張色のため、白以外の模型上では大きく見えやすい。
うちではあらかじめ了解を頂きベージュを使用させていただいている。
この診断用ワックスアップですら、歯科医師自ら行うことも可能だ。
しかし殆どの場合、歯科医師の技工技術は歯科技工士の技術には到底及ばない。
そして作られたプロビジョナルレストレーション、参考用模型は、ゴールには程遠い。
参考用模型より、正中はもう少し...切縁の長さは...カントゥアは...
結果的に歯科技工士の感性に頼られてしまう。もちろんそれでもかまわないのだが、
そもそも患者にとっての理想的な形態を模型上だけで再現するのは難しい。
歯科技工士の技術は歯科医師の技工技術をも凌ぐもので無ければならない。
そして、その技術に対する歯科医師からのリスペクトがあるから歯科技工士でいられる。