2010/07/09
“始め”
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PFM
#3 PFM Crown CreationCC
歯科技工士になって始めて手掛けた自費のケースは、
上顎第一大臼歯のPFMでした。今でも忘れません。
新米歯科技工士にとって自費のケースはある意味特別なものでしたし、
しかも、そのチャンスがもうじき丸一年ってところで巡ってきたのですから。
嬉しかった反面、学生実習以来の作業に不安もありました。
先輩から勧められた『ザ•メタルセラミックス』。訳けも分からず眺めていました。
院内ラボだったので立ち会いを行うことは可能だったのですが、
当時の私は臆病風に吹かれ、またとないチャンスを生かし切れませんでした。
あとからドクターから色が合っていなかったとのご指摘を受けましたが、
奥歯だしあまり目立たないからということで、患者さんは納得してくれたようです。
次に手がけたのが上顎犬歯のPFM。これは悲しいほど合っていなかったです。
緊張しながら挑んだ立ち会い。ショックでした。見事に合ってません。
患者さんの前では否定的な言葉を口にしてはならないことを、
ドクターから聞いていましたからその場はクールに装いましたが、
明らかに違和感のあるその口元に、顔は引きつっていたと思います。
もちろん私たち歯科技工士から、やり直させてくれとはなかなか言えません。
ステインをしてなんとなくまとまりましたが、透明感はでませんでした。
こうして忘れられない立ち会いデビューは初めての自費のケースから半年後。
2度の失敗を重ね挑んだ3回目はすぐに訪れました。下顎第一大臼歯のPFM。
さすがに今度こそはと意気込んでみたものの、またもや悲しい仕上がり。
歯列の中で明らかに存在感のある下顎第一大臼歯は、間違いなく白過ぎた。
患者さんは喜んでおられ、笑顔で「ありがとう」と言ってくださいましたが、
いたたまれない思い、そして悔しいやら情けないやら。
今まで、こんなことを何度も何度も繰り返してきました。
言い方は悪いですが、多くの患者さんを踏み台にしてきました。
望まない結果はいくらでもあります。
でもそういった経験が私を成長させてくれたことは、紛れもない事実です。
これを読んでいる患者さんの中には、
「それはひどいんじゃないの」と、お思いになるかもしれません。
しかし分かっていてほしいのは、誰にでも“始め”はあるということ。
昨日より今日、今日より明日、明日よりあさって...
そういうつもりで頑張ってきました。
そして、未だにそうであるということ。 おそらくこの先も。
精一杯やった結果は必ずしも、最大限の評価に値しない。
だからといって、手を抜いてしまうようなことがあってはならない、
それは頼って下さったドクターに、そして患者さん達に対して失礼なこと。
当時は当時の私の精一杯がそこにありました。
今は今の私の精一杯がここにあります。
そして、いつかまたその患者さん達のケースと出会えたなら、
今の自分の精一杯で挑ませていただきます。