2011/01/07

BUDDY

うちの社名でもある “ BUDDY ”。手元の辞書で調べると、“ 仲間 相棒 ”と出ています。 

Buddy System(バディシステム)というと、
危険な仕事などを二人が組になって、互いに助け合いながら行動する方式のこと。
スキューバダイビングなどをやられる方は聞き慣れていると思います。
宇宙での船外活動などでも使われ、互いにBUDDYと呼び合う。

そんな事は後から知ったのですが、初めて耳にしたのはUCLAの学生だった頃。
あるドクターから『Buddy!』と初めて声をかけられた時、
遠くから手を振る彼に、後ろを振り返り私以外の誰もいない事を確認すると、
名前を間違えて覚えられものだと苦笑いしたのを覚えています。

ケースの事で話があると彼は英語の不自由な私に、
絵に描いて説明してくれたり、何度も繰り返し話してくれました。
勇気を振り絞り『バディはどういう意味か』と尋ねると、
彼は真剣に身振り手振りで教えてくれ、そして、友達に似ていると言う事を理解しました。

歯科医師でもある彼が、歯科技工士の私に。

そして英語もろくにできない外国人の私をバディと呼んでくれた事が、
当時、凄く嬉しかったです。実際はあまり深い意味はなく気軽に使われていますが . . . 。
ただ、この出来事がきっかけで、会社を立ち上げたらBUDDYと付けようと、
勘違い学生の私は勝手に思っていたわけです。
開業なんてまだ何も考えてもいませんでしたから、当時は。

歯科医師と歯科技工士の間に、お互いがバディと言い合えるような関係を。
患者の口の中を治すという任務に対して、共に力を合わせ成功に導く。

そんな思いが込められています。


そして、もう一つ。
うちのスタッフをはじめ、私と同業でもある歯科技工士同士、
信頼できるバディでありたいし、あり続けたいと願っています。

アメリカで開業するに至ったのも、
当時ロサンゼルスで知り合った同年代の若い歯科技工士に感化されたのが一番大きいです。
それぞれが別の場所で働きながらも、夢を語り、意識し合い、励まし合い、
仕事である歯科技工さえも彼らは楽しもうとしていた。
少なくとも私にはそう見えたし、そんな彼らが学生の私には憧れでもあった。
そして、彼らの勤める歯科技工所オーナーの方々の情熱やカリスマ性に惚れ込み、
私が一番お世話になったUCLAで出会えた素晴らしい歯科技工士の方々との貴重な経験。
そんなたくさんの歯科技工士に憧れて、なんとかここまでやって来れた気がします。

歯科医師との縦のつながりが強いせいか、横のつながりが希薄な歯科技工業界。

開業したオーナー同士が肩を並べて業界の将来について話し合う機会は少ない。
そもそも皆忙しい、そして生き残りをかけた腹の内は恐らく見せたがらないものだ。
比較し合うのではなく、お互いを意識し、共に協力し合える歯科技工士同士の関係。
日本の歯科技工業界が直面している様々な問題に対して真剣に向き合うためにも、
バディと呼べるような関係が必要なのではないだろうか。

昨年末、ある人物がうちのラボを突然訪れてきた。8年ぶりの再会である。
私のことをバディと呼んでくれたドクターは、
ビバリーヒルズの一等地に歯科医院を構えていた。

二人で手がけた上顎フルマウスの患者さんが、今は彼のオフィスを訪れている。
彼とは大きなインプラントのケースをいくつか手がけたが、その中でも特に印象深い。
前歯のポーセレンが少しチッピングしているだけで、あとは特に問題ないと聞いた。
とりあえず8年、我が子の成長を聞かされるようで、なんだか嬉しい。

彼がUCLAを去り8年以上の時間が経ち、今はお互いが別の場所で仕事をしている。
久しぶりに出会えたのだが、うちがスローだからといって『仕事を下さい』とは言えない。
当然、彼にも今お付き合いしているバディと呼べる歯科技工士がいるのだろうから。

私のラボからは車で10分程だろうか、
いつか私も彼のオフィスを訪れたいと思っている。「 What's up buddy! 』ってね。