2010/03/27

門出
















Disks & Burs for Handpiece

高校を卒業してから、歩み始めたこの道。
あの頃描いた将来の自分に、少しは近づけているのだろうか。

歯科技工士になろう。

大学進学は早くから諦めていた。自分の事は自分が一番わかっていた。
目的も無いのに大学を目指す意味がわからなかった。
学年でも指折りの成績の悪さ、どこかで妬んでいたのかもしれない。

手に職をつける道を選んだ。

手先が特別器用だったわけではない。ただ、絵を書く事は昔から好きだった。
好きな絵を書いていると時間が経つのを忘れた。夢中になれた。
そして歯科技工をしている時も、それに近い。

好きかと言われれば違う。でも嫌いじゃない。

社会に出ると、教わった事の多くは国家試験合格のために必要な事だと分かった。
もちろん知っておく必要はある。しかし、それ以上に現場で学ぶ事の方が多かった。
何度も失敗を繰り返し、叱られ、凹み、悩み、不安になる。
自分だけならまだしも先輩やドクター、患者にまで迷惑をかけてしまう。
プレッシャーは焦りを生み、負の連鎖からなかなか抜け出せない。

誰にでも初めはある。この言葉に何度も救われた。


歯科技工士には誰でもなれる。得手不得手は当然ある。
しかしそれは大きな問題ではない。どれだけこの仕事に打ち込めるのか。
全ての症例が大事な経験となり、続ける事は技術を確かなものにする。
















一人前の歯科技工士になる。

掲げた目標にはいつしか達していた。
いつの時も傍に見守ってくれていた先輩や、ドクターの方々がいた。
時には厳しく、時には優しく。自分がいかに恵まれていたのかその時は気付けない。
一人で悩んでる気がしていた。一人で解決してきたつもりでいた。
自分の事で精一杯だったから。失礼な事もあっただろう。

心から感謝しています。

あの日、小さな一歩を踏み出してからどれだけ歩いてきたのか。
スタートラインは遥か記憶の片隅、道はまだまだ続く。
いまだ辿り着くべき場所は見えてない、そこに何があるのかも分からない。

ただ、今もこうしてその道の上を歩く。

卒業の季節。悲しいけれど、大切な一歩。
新しい門出が素晴らしいものでありますように。