2010/12/29

単純に















#15 Full Gold Crown     Type Ⅲ Gold

歯科技工士の私が、上顎の第一、第二大臼歯(いわゆる上の奥歯)をクラウンにするなら。
その材質は金。迷わずフルゴールドクラウンで作ります。もちろん、私自身の手で。

マージン封鎖性はその他の材質の比ではありませんし、
クラウンそのものは絶対に壊れませんから、耐久性に関しても問題にはならない。
鏡面仕上げされたゴールドは生体親和性も良く、また対合歯にも優しい。
上顎の奥歯はそもそも真正面からでもあまり見えませんし、
大口開けて仰け反る事でもなければまず見えませんから、白くなくてもいい。
しっかりとケアすれば一生ものだと思います。

金は耐食性、耐酸性が優れている事から古くから装飾品などにも多く使われている。
人類が金を手にしたのはおよそ六千年も前と言われ、今もなお、人々を魅了し続けている。
限りある資源と考えるなら、その価値は更に上がる可能性を秘めていますから、
口の中に入れる価値ある材質としての需要は上がるかもしれません。

ここ数年、金は高騰し続けています。
開業当初の5年程前、私が仕入れる18K(カラット)の歯科用金属は$400程度。
先日仕入れた同じ金属が およそ$950。軽く倍以上。

金属が高いからと言う理由だけで安易にオールセラミックを勧めるのなら、
あまりにも無責任過ぎますし、将来性も踏まえた治療であることが医療では絶対条件だ。
補償期間の10年(?)が過ぎれば、患者にも言い訳がし易いのだろうか。
自分が患者であれば何を入れるのかを考えたとき、
歯科医療に携わる人間であれば、ある程度答えは出ているはず。


もちろん、口の中の状況は人それぞれ違いますから一概には言えない。
患者自身、また歯科医師一人一人の価値観も違いますから求めるものも違う。
ただ、あくまでも個人的な意見ですが、歯科技工士の私が患者だったとして、
オールセラミックによる全顎補綴などしようとは思わない。

医療に携わるものが利益や損得勘定だけで治療を行った結果が、
今年問題にもなったインプラント使い回し疑惑だったり、
近視矯正手術の業過障害事件だったりする。 当たり前であるはずの事が当たり前でない。

自分が患者だったら . . . と、常に問い続ける必要があるのではないだろうか。
 
かなり稀にですが、18K以上のゴールドでも金属アレルギーが出る人がいます。
18Kのアクセサリー等でかぶれたりする人は、
他の材質を検討なされた方がいいのは言うまでもありません。

ちなみに、私の場合。それ以外の臼歯(奥歯)は真正面からも見えてきますし、
口を開ければ当然目立つので、審美性と耐久性を考えてPFM(メタルボンド)を。
前歯に関してはオールセラミックでまず問題ないでしょう。審美的にも有利ですし。
歯を抜く事になったら、インプラントを入れたいと思います。なるべく早いうちに。

その材質の特性を活かし、口の中で長いこと機能できる歯科補綴物。
適材適所といいますか、その判断は経験によるものもあるかとは思います。

自分が患者なら、あるいは愛する人に何を。

ただ、単純に。それだけではダメなのでしょうか。