2010/12/13

責任
















#3,19 PFM Crown     Metal Coping

最近、うちの仕事の95%はPFM(メタルセラミック)になっている。
望んでそうなったわけでもなく、特に勧めているわけでもない。
以前は15%ぐらいはオールセラミックのケースも手がけていた。
今では1〜3% ぐらいだろうか。

オールセラミックが審美的には有利なのは疑う余地もないのだが、
私の憧れている歯科技工士の方々はPFMとはいえ、素晴らしい審美的回復を実現していた。
そんな歯科技工に憧れた一人なので、いつかは自分もと、どこかこだわってしまう。
色調や強度を考えれば、理想的なポーセレンの厚みが重要になってくる。
支台歯形成にもよるが、最終外形がメタルコーピングからイメージ出来る。
そんなメタルワークがあっての審美的回復であり耐久性でもある。

うちで手がけたケースに関しての保障期間は、一応書面で1年と伝えている。
さらに言えば、一定の条件の下でと付け加えて。
ただ、いかにもマニュアル的で、私自身疑問がある。

一つに壊れた原因の究明は困難だからだ。歯科医師か歯科技工士か。
それぞれの立場を守ろうとするなら、多くの場合は平行線のままだろう。
原因は一つではないかもしれないし、その原因と思われる事ですら一つの仮説に過ぎない。
さらには、患者自信に原因が無かったとも言い切れないのだから。

二つめは前回記事にもしたが、形あるものはいつかは壊れると思っている。
それは明日だろうと壊れないということを保障するのは非常に難しい。
壊れた時にどうするかの保証なのだが、そもそも壊れないように最善は尽くしている。
その保証を示すことに矛盾を感じている。

三つ目は保障期間外なら責任逃れができてしまうということ。
うちの場合、1年の保証と書面にある以上1日でも過ぎていれば、保証対象外。
全額請求しても何ら問題は無い。しかし、そんなライン引きは都合の良い守りでしかない。


ドクターは患者に対して何らかの保障をしているのだろう。5年、10年、15年?
それぞれのドクターがどのような保証を患者に提供しているかなど、私は知りもしない。
『保障期間内だから患者に請求はできない。歯科技工士もタダでやり直せ。』
よく聞く話だが、私にはどうも納得ができない。
その補償内容自体、私とドクターの間で決め、患者に与えたものではないはずだ。

ただ、壊れた理由が目で見るより明らかで、
うちに非があったのなら、すぐに無償でやり直させていただく。
それは当然の事で、再びチャンスを与えてもらえたことには素直に感謝したい。

うちで手掛けたケースに関して責任を持つということは、
その経過を見守っていくということ。意図せず壊れたクラウンに対しても、
壊れた理由を考察し次に活かし、より壊れにくいものを提供するために最大の努力をする。
ドクターとの信頼関係を長く続けていくことが出来なければ、それは難しい。
歯科技工士なら幾らでもいると思っているような歯科医師に、

私の考える、その責任を果たすことは出来ない。

開業以来すべての指示書は保管してある、何かあればある程度の情報は用意できる。
そして、理由がどうであれ壊れるときは壊れる。
絶対に壊れないものを提供できる歯科技工所があるのなら、

そこを利用するのも、歯科医師の自由。

30年後、以前手がけたクラウンが壊れたと戻ってきたのなら、
その時もまた同じように、私は最大の努力をする。
そして、技工料に関しては半額だけ請求させていただくつもりだ。

何年経とうが、うちで手がけたケース。

壊れないものを提供することが出来ない以上、その責任はあると考えている。
そして、 長い間その経過を見守る必要がある以上、私は歯科技工士であり続ける。

その責任を果たすために。